スケルツォ第2番

同性愛をカミングアウトをしたある人の日記を読んで、妙な勇気を貰ったので、私もこんなことを書いてみる。


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私に初恋があるなら、それは人間では無かった。

間違いなくショパンの『スケルツォ第2番』だった。


初めてその曲を聴いたのは中学生か、それより前だったと思う。この世にはこんなに美しく劇的で、じらせ上手で、底なしにやるせない感情を思わせるような、見事な和音で作られた音楽があるのだと感動した。

私はスケルツォ第2番に心を奪われ、部屋にいる時、寝る時には必ずそれを流しておくほど夢中になった。どんな男性俳優を見てもかっこいいと思ったことのない私が、初めてこの世のものに『かっこいい』と思ったのだった。


私にとってスケルツォはあまりにイケメンだった。きっと友人たちの言っていた恋愛感情はこれなのだとも思った。
聞いているだけでは物足りないのに弾けるだけの技量もなく、かと言って触れられる物体もない音楽に悶々とする日々。“彼”と出会ってからは、感動させられたりあまりの素晴らしさに嫉妬させられたりで心が休まらなかった。

本や映画の恋愛描写によくある『胸が苦しくなる』という体験をしたのも初めてだった。

手の届かないものに、一喜一憂させられながら追いかけている。アイドルの追っかけたちと自分は、何ら変わらないと思った。


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以降、私は様々な音楽や物体に恋愛感情を持った。それらはただの『好きなもの』に感じる高揚感とは、全く別物だった。

そんな経験のせいで(おかげで?)、人から人への恋愛も、そういう感覚なのだろうと思っている。どうしようもなく好きで、飛びつきたいような衝動にかられるあの感覚だ。友人たちの恋話もそんな感じだったし、きっと間違いではないのだろう。

しかし高校生になっても専門学生になっても、私には一向に恋愛としての好きな“人”ができないままだった。人間に恋をするのは難易度が高かった。


やがて夫と出会って、結婚もした。
彼に対して男性として惚れるとかそういうのは無かったが、人としての好感度が高く、私にとってはそちらの方が重要だった。
結婚をするための私の判断基準は、『相手が同性であっても人間でなくても結婚したいか』で、彼はそれを唯一クリアした。また、結婚という契約は私を生きやすくするというメリットもあった。



そのまま生きてきて、ふと恋愛というものについて考えることがあった。今ちょうどスケルツォ第2番がかかっている。

スケルツォは相変わらずかっこいい。
もしこれが法的に認められるのなら、私は夫ではなくスケルツォと結婚したい。自信を持って言えるが、彼(音楽)に抱くのは恋愛的感情だ。

けれど私が恋する理由は、スケルツォが人間じゃないからなのだ。いつでも完璧で、私を傷つけることは昔もこれからも一切ない。その安心感も魅力も雄大さも、人間には絶対に適うことができない。



そしてこれは、何年も前に行き着いたひとつの答えだ。夫の立場がある手前、母以外の人に言ったことはほとんどないし、ちょっとしたカミングアウトになるが、私は対物性愛者だ。

世の中には様々な性的指向がある。
最近よく聞くLGBTには、同性愛や両性愛、無性愛など様々ある。私はそれまで一般的なLGBTで言われる中では、限りなく無性愛者(アセクシャル=人に恋愛も性欲も抱かない)に近いと思っていたが、昔エッフェル塔と結婚した女性の話を聞いた時に、自分はその人と他人ではないと確信した。

人間に対しては抱いたことのないレベルの感情を、物理的な命がないものには抱くことができる。親や夫を含め、人間に対して触れたいと思ったことはないが、命がないものになら惹かれるし、触れたいと思う。

自然風景に死後の世界を見出すように、命がないものにこそ人格を見出し、恋をすることができる。そういう人なのだ。


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自分のそういう部分について否定をされたくないように、私も人の恋愛や性的指向は否定しない。正直なことを言って突っ込まれたくないあまり、私は普通の人(多数側)を演じて生きている部分もある。

確かに人間が繁殖繁栄をするという目的の元では、人同士、さらには異性愛が至上という主張もよく分かる。だが、これだけ人の文明も意識も知能も進化した時代で、恋愛や性欲についてだけ原始的な本能レベルで語り、正義を決めつけるのは、なかなか腑に落ちない。

同性愛をカミングアウトしたある人の日記は、非常に清々しいものだった。自分はこうだという事実に対して、人の余計な意見を聞くのはやめるといったものだ。その生き方を、見習いたい。







【New!】

 

2020.9.02

新規作成した絵を掲載いたしました。TOP画像およびGALLERYでご覧いただけます。

 

2020.9.02

演奏事業の再開・中止に関する最新情報を更新いたしました。詳細はNEWSにて。

 

2020.6.18

ORDERページ(注文参考情報)を現在非表示にしております。編集完了次第 再掲いたしますが、それまでの間につきましては料金等 直接お問合せください。

 

2020.4.15

コロナ感染拡大防止のため、4月・5月・6月の各種イベントと演奏業が中止・延期になります。NEWS

 

2020.4.4

▼食育スペシャリスト中村詩織さんに制作のご依頼をいただいたLINEスタンプが販売開始いたしました!

▼イラストメイキング動画のYouYubeリンクを追加いたしました!

どちらもLINKからご確認いただけます。

 

2020.4.4

コロナ感染拡大防止のため、4月に予定しておりました各種イベントを中止・延期とし、該当宣伝ページを削除いたしました。騒動が収束次第、改めて設定と告知をいたします。NEWSに掲載中のイベントは現在のところ開催予定となっております。

 

2020.3.6

プラネタリウム朗読会への出演情報、マンドリンオケへの出演情報を追加致しました。

詳細はNewsへ。

 

 

2020.1.28

新作イラスト「雪」を追加いたしました。

※デジタルイラストへ更新

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