悪童日記のデジャヴ-2

タイトルは以前の日記の続きだと分かるように設定しただけで、今回は悪童日記そのもとはあまり関係がない。私の思い出話の延長だ。

前回と同じく、性の話になるので苦手な人は閲覧を避けてほしい。


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体を売りそうな女性をスカウトする活動は裏で続いていたが、普段は真面目な学生だった。普通に授業に出て、普通にピアノの練習をしていた。

その頃、ある先輩と付き合うことになった。2つ歳上で、彼はピアノが上手だった。付き合うきっかけは私が押しに負けた程度のことだが、彼の演奏は好きだったので、これからこの人のことを好きになるのかもしれないと思っていた。

...まぁ、ならなかったのだけど。


ある日、彼の部屋で楽しくお酒を飲んでうたた寝をした隙に、気がついたら体をベタベタと触られていた。すでにシャツの中に手が入っていて、一気に最悪な気分になった。

一応付き合っているのだし先輩があわよくばと考えるのは自然なことだったのかもしれないが、私は何より人が寝ている隙に手を伸ばしてくるそのモラルの無さ、卑怯さが受け付けられなかった。

何度か強めに拒否はしたが、相手は引き下がらない。ふと、マゾな社長の部屋で流されていたAVの1つを思い出した。嫌がる女性をなし崩し的に襲う作品だった。先輩も、そういうのを見て真に受けているのだろうか。嫌がるのも好きのうちだと、本気で思っているのだろうか。

女性があからさまな悪態をついてまで拒否をしないのは、力で敵わない相手の逆上や暴力を避けたいからだ。なるべく機嫌の宜しいまま、穏便にお帰りいただきたい。

そんな考えなど、彼は想像できないのだろう。


今の私ならその場できっぱり断るか、『襲われたら急所を喰いちぎってやる』くらいの度胸があるが、たいていの人はそんな物騒な心構えなど持っていない。

その頃の私もそうだった。相手に臆してしまい、結局、最悪の展開を避けるために行為に応じた。


心身ともに疲弊した。
恋愛の先にセックスの義務があるのなら、私に恋愛はハードルが高すぎると思った。

明らかに距離をとって寝ようとしてる私に対し、相手は『ごめん、同じ部屋にいたからつい...』と言った。


『つい』。
みんなこの言葉を言うのだ。なんの免罪符にもならないのに。彼らは『つい』やったことで一瞬の願望を叶えるが、私はそんな『つい』にいちいち嫌な思いをさせられる。


翌朝、私は一方的に別れを告げた。
安心して隣にいられない相手なら、恋人としての価値はない。



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当時の自分はいろんなトラブルにまだまだ不慣れで右往左往していた。この日記を書いていると、つくづく私は不器用で馬鹿だったなと思う。自ら不幸を選んでいる様子に読んでいる人もイライラするだろうが、もうひとつ日記のネタになりそうな人生の汚点エピソードがあるので書く。



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先輩、もとい猿と別れて楽しい日常を取り戻した頃、ある楽器科の先生が目を腫らして出勤してきた。先生は10年来の恋人に振られてからひどく落ち込んでいて、連日、酷い有様だった。

先生とは度々一緒にご飯を食べるような間柄だったが、ある時〝癒してもらえませんか〟と涙ながらに打診され、同情してしまった私は、それで立ち直れるならと思い体を貸すことを選んでしまった。

どうせ私の性体験はろくでもない始まり方をしたのだし、自分の意思で体を貸すくらい大したことではない。そう思っていた。


しかし、単純にはいかなかった。

私は予期せぬ災難に対して苦痛を乖離させるのが得意なだけで、自ら選んだ不幸に耐えるのはとても苦手だということを今さら知った。今までとは違い、後悔と迷いが自己をつなぎ止めて離せなくなってしまった。それは麻酔なしで外科手術を受けるようなものだった。

進んで『何にもならない性体験』に飛び込んでしまった事実は、強姦なんかよりもはるかに苦くて喪失感のある後味となった。

せめて相手が知らない人なら良かったのかもしれない。普段の先生を知っているだけに、『あぁ、この人でも発情期の犬みたいになってしまうんだ...』と思ったら目を背けたくなった。

特別先生を尊敬してたわけではない。元々セックス依存性の気があり、下品な人間なのは知っていた。けれどそれを目の当たりにすると、やっぱり何かが違う。


〝この人は何を頑張っているのだろう。私は商品にすらならないままどうしてここへ来てしまったんだろう。なぜ可哀想だと思ってしまったんだろう。お金にならないセックスになんの意味があるのだろう。人間の性欲ってなんて穢らわしいのだろう。〟

そんなことをぐるぐると考えて、泣きそうになっていた。

本当のことを言うと涙の1つや2つは耐えきれず零れたと思うが、部屋が暗かったおかげで気づかれなかった。もし気づかれてしまえば、後が面倒になると思いそれ以上は我慢した。

部屋を出る時、先生は『つい無茶を言って、ごめんな...』と言った。




家に帰った。
私は忘れようとして、手頃な友人を呼んだ。誰かとお酒でも飲んで喋っているうちに気が晴れると思った。

この時に来た友人は同級生で、後の夫だった。

彼とは1度付き合ったが、やはり恋愛関係というものが面倒くさくて別れてもらっていた。別れても尚、彼もまた私とやりたがる瞬間があって、私は学生に払えるギリギリのところで『5000円くれたら良いよ』と言ってそれに応じることもあった。

そんな不誠実な付き合いをしてきた彼だから呼んだのだった。こんな気分の時に、普通の友達とは会いたくなかった。



顔に出したつもりはないが、彼(夫)は私がいつもと様子が違うことに気がついたようで、なにかあったかと尋問してきた。

私は思い出した途端に話すより先にうっかり涙が出てしまって、あったことを話すしかなくなってしまった。彼のことなど大事ではない。嫌われても困らない相手だったから、言葉を選ばず学校の先生と寝てしまった全てを話した。


彼は叱りつつも宥めるような声色で、『もう意味がわかんない』と漏らした。そりゃそうだ、自分の判断で飛び込んだ先で、勝手に傷ついて帰ってきたのだ。自分でも意味がわからない。私は何をしているのだろう。

私は私で『一瞬の同情のせいで一銭にもならなかった』と泣いてるし(泣くところはそこかよって感じだか)、彼は彼で、私の今までのことも含めて『もう少し自分を大事にしなさいよ』と繰り返した。

彼は、私が性を換金することで心の安定を保っていることを見抜いていた。




外が明るかった。

私が一通り泣き済んでぐったりしている頃、彼が思いもよらぬ一言を言った。

『で、〇〇先生のは大きかった?』

私は盛大に吹き出した。最後に言うことがそれかと思って笑ってしまった。彼が一連のことを笑い話に変えようとしてくれているのを分かったうえで、私は答えた。

『お世辞にもそうは言えない』

彼も私も爆笑した。人の体のことをあれこれ言ってはいけないし、最低な話題なのは分かっている。それでもこの時は、あの瞬間に救われた。

そんな彼の人柄に助けられたことをきっかけに、こんなことはもうやめようと思った。
売春の斡旋もやめ、(日記では触れていないが)その他の良くないあれこれもやめて、白い人間になろうとした。



先生とは元の関係に戻った。
度々誘われることはあったが、二度とは応じなかった。

生徒に手を出した先生、という見方をすれば先生もまた最低なのだが、その人が良い人であるかどうかはなかなか白黒つけられるものではない。


後に、家出をして放浪生活をする私に泊まる部屋を貸してくれたのは、他でもないこの先生なのだ。


【New!】

 

2020.6.18

ORDERページ(注文参考情報)を一時的に非表示にしております。編集完了次第 再掲いたしますが、それまでの間につきましては料金等 直接お問合せください。

 

2020.4.15

コロナ感染拡大防止のため、4月・5月・6月の各種イベントと演奏業が中止・延期になります。NEWS

 

2020.4.4

▼食育スペシャリスト中村詩織さんに制作のご依頼をいただいたLINEスタンプが販売開始いたしました!

▼イラストメイキング動画のYouYubeリンクを追加いたしました!

どちらもLINKからご確認いただけます。

 

2020.4.4

コロナ感染拡大防止のため、4月に予定しておりました各種イベントを中止・延期とし、該当宣伝ページを削除いたしました。騒動が収束次第、改めて設定と告知をいたします。NEWSに掲載中のイベントは現在のところ開催予定となっております。

 

2020.3.6

プラネタリウム朗読会への出演情報、マンドリンオケへの出演情報を追加致しました。

詳細はNewsへ。

 

 

2020.1.28

新作イラスト「雪」を追加いたしました。

※デジタルイラストへ更新

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