どうして夫と離婚しなかったのだろう。

直結する答えは、『面倒だったから』だと思う。

 

結婚願望も結婚への夢もないまま結婚した私は、離婚の危機にあっても『さっさと離婚して再婚したい!』という気持ちもなかった。

 

そもそも離婚を考えていたのは私だけで、決定権が私にあったことも大きい。相手は望んでいなかったし、別居は執行猶予のような期間でもあった。

 

 

今こうして私がパソコンをいじっている横ですやすや寝ている夫を見ると、不思議な気持ちになる。私は結局、この人と別れなかった。

 

収入も私の方がずっと多い。家事だって私が多くやっている。(在宅勤務があるためなので仕方ないのだけど)

そのうえ、子供が必要となれば産むのだって私の負担だ。仕事も休まないといけないし、痛い思いをするのも私だ。そんなことを考え始めてしまうと、結婚なんてしなければ良かったという思いで埋まりそうになる。

 

しかし私は具体的な離婚のチャンスを逃し、今も同じ家で夫と暮らしている。

 

私は夫を捨てられなかったのだ。

 

 

情はあった。そして大きな借りもあった。私の人格がまともになったのは、彼のおかげだ。

 

学生の頃の自分は先生にも友人にも気に入られたが、それは気に入られる人間を演じるのが上手いだけで、中身は善人とはいえず誰にも心を開かなかった。

 

そんな中、いくら冷たくしても酷いことをしても、尻尾を降りながら私の後ろをついてくる仔犬みたいな彼がいた。ちなみに体格は全然仔犬ではない。

 

当時、彼のことは好きではなかった。無邪気で何不自由なく育ってきた太陽のような人間。何もしなくても人から愛される人間で、私はそれが鬱陶しくて仕方なかった。だからこそ、彼には好かれようとする必要がなく、なんでも話せてしまった。

 

いつだったか私が取り返しのつかないことをして落ち込んだ時、大切な友人にこそ言えないドン引きされるような話だったが彼には話せた。彼は引くどころか必死に慰めの言葉をくれて、ついでに『もう少し自分を大切にして』と私を少し叱った。

 

ベタな流れだが、私が改心しようと思ったのはこの時だった。

私は彼を故意に傷つけることだってしてきたし、好意を利用したこともある。それなのに、彼は離れることなく私に振り回され続けた。どうしてそんなに親切なのか訊くと、『あなたといるのが楽しいから』と言う。

 

意味がわからなかった。

...もしかしてすごいドMなのかとも思った。

 

よくよく聞くと、彼にとって私は特技も性格も含めて別世界の人に映っていたらしく、『私』そのものが興味深かったそうだ。

 

とにかく、彼の底なしの優しさに私は助けられ、私はもう彼を傷つけるようなことはしないと誓った。

 

 

 

しばらくして結婚した。

 

 

彼の職場がブラック化して心身ともに病んでいた時、私は支えきれていなかった。だから彼は逃げ場をなくして、警察のお世話になることや不倫もしたのだと思う。当時はびっくりしたが、落とし前はつけたし今は別に怒ってはいない。

 

 

彼の失態には大いに傷つけられたが、学生時代に私がしたことへの報いなのだとも思っている。かつて私が振り回した人だ。しばらくは私が振り回されてもいいのだろう。

 

 

今、夫は私の部屋ですやすやと寝落ちている。

 

その寝顔を見ながら、この人が望まない限り私は離婚しないし、返しきれない恩を返すつもりで忠義を尽くそうと改めて思った。

 

私は夫のことを大きな仔犬のようだと思ってきたが、いつのまにか犬みたいに手懐けられていたのは私の方かもしれない。

 

 


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プラネタリウム朗読会への出演情報、マンドリンオケへの出演情報を追加致しました。

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新作イラスト「雪」を追加いたしました。

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2月出演・大塚all in fun のお席が完売いたしました。

ありがとうございました!

 

2019.12.01

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2018.11.15

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